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Twitterで数学に関する話題を発信しています。本家のサイトはログインしなければ閲覧できない仕様になってしまったので,当サイトに移して誰でも見られるようにしました。(2023.8.1)

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浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

学校数学では 虚数\sqrt{\text{\small 虚数}} は定義されていません。でも,方程式 z2=iz^2=i を解けという問題は出題されて,解も求められます。だから 虚数\sqrt{\text{\small 虚数}} があってもよいのでは?と思っている人は多いと思います。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

複素解析の分野では,複素数 zz に対して z\sqrt{z}zz の平方根を表します。平方根は2つあるので,z\sqrt{z} は2つの値をとる二価関数です。例えば,i=±22(1+i)\sqrt{i}=\pm\[\sqrt{2}/2]\(1+i) です。どちらか一方だけの値を表したい場合は,その選び方を定めて z\sqrt{z} を一価関数とすることもあります。そのときの値を主値といいます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

学校数学での z\sqrt{z} は,zz が実数の場合に限られていて,しかも主値を決めた一価関数として扱います。例えば 4\sqrt{4}±2\pm2 のうち 22 の方だけ,4\sqrt{-4}±2i\pm2i のうち 2i2i の方だけを表します。zz が虚数のときの z\sqrt{z} は学校数学では扱わず,主値の選び方も決まっていません。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

先ほど i=±22(1+i)\sqrt{i}=\pm\[\sqrt{2}/2]\(1+i) と書きましたが,右辺の 2\sqrt{2} も二価と考えるなら ±\pm を付ける必要はなく,i=22(1+i)\sqrt{i}=\[\sqrt{2}/2]\(1+i) だけで済ませることができます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

学校数学の定義では z1z2=z1z2\sqrt{z_1}\sqrt{z_2}=\sqrt{z_1z_2}z1, z2z_1,~z_2 が負の実数とき成り立ちませんが, \sqrt{~} を二価と考えれば成り立ちます。実数に限らず,任意の複素数 z1, z2z_1,~z_2 に対して成り立ちます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

他にも z\sqrt{z} はすべて二価関数と考える方が説明がシンプルになる話は多いのですが,世間一般では 実数\sqrt{\text{\small 実数}} は一価であると考えるのが普通なので,そうではない意味で z\sqrt{z} を使うと誤解されかねないという問題が起こります。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

多価と一価で同じ  \sqrt{~} を使わず,区別がつく表記に変えればよいのですが,一般に普及しているものはありません。多価関数の log\logarg\argarcsin\arcsin については,Log\mathrm{Log}Arg\mathrm{Arg}Arcsin\mathrm{Arcsin} のように先頭を大文字にすると主値を表すという習慣があります。 \sqrt{~} にもそういう書き分け方がほしいところです。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

多価関数の  \sqrt{~} を主値に制限して一価にしたものを pv \mathrm{pv}\sqrt{~} と表す記法もあるそうですが,式のデザインとして微妙で,あまり多用するには向いていません。しかも, \sqrt{~} は一価の方で広く認識されているので,変えるなら多価の方の  \sqrt{~} であるべきです。そうでなければ誤解を避けるという目的を果たせません。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

方程式 x3=2x\left|x-3\right|=2x を解くとき,x3=±2xx-3=\pm 2x と変形してはいけないという風潮がありますが,決して間違ってはいません。確かに同値変形ではありませんが,これは必要条件への変形であって,十分性の確保として 2x02x\geqq0 を考慮すれば大丈夫です。一般に,y=f(x)      y=±f(x)  かつ  y0\begin{align*}&y=\left|f(x)\right|~\iff~y=\pm f(x)\;\text{\small かつ}\;y\geqq0\end{align*}が成り立ちます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

対数方程式 log2x+log2(x3)=2\log_2x+\log_2\(x-3)=2 を解くときも,log2x(x3)=2\log_2x\(x-3)=2 に変形するのは,そのままでは同値ではありません。そこで,あらかじめ真数条件 x>3x\gt3 を提示して,その前提のもとであくまで同値変形として進める方法が一般的です。しかし,これも「必要条件に変形して,後で十分性をチェックする」という方法で解いても問題はありません。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

無理方程式の実数解を求めるとき,例えば 5x=x+1\sqrt{5-x}=x+1 については,まず両辺を2乗し,あとで x+10x+1\geqq0 の条件を考慮するという解き方が一般的です。これは「必要条件に変形して,後で十分性をチェックする」という解き方になっています。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

上記の3つの方程式について,一般的とされている解き方に一貫性がないように見えます。これは教科書の解き方がそのまま使われているからです。教科書はその場の指導目標や学習段階に応じて内容を選んでいるのであって,解法の体系化を目指すものではありません。教科書が示しているのは,あくまでその時点での模範解答の1つです。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

ペヤングを買うとおまけでキティちゃんのカードが1枚入っているというキャンペーンがあって,YouTuberのしのけんさんが全10種類のカードをそろえるまでペヤングを食べ続ける企画をやっていました(これ)。結果として35個目でコンプを達成していましたが,これは運がいいのか悪いのか考えます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

1010 種類のカードを nn 回以内の試行でコンプする確率 pnp_n は,少し前の投稿で求めた式を使って,pn=k=09(1)k10Ck(1k10) ⁣n\begin{align*}&p_n=\sum_{k=0}^{9}(-1)^k\nCr{10}{k}\(1-\[k/10])^{\!n}\end{align*}これを使って期待値 EE を求めると,E=n=10n(pnpn1)\begin{align*}&E=\sum_{n=10}^{\infty}n\(p_n-p_{n-1})\end{align*}この級数は収束して,E=29.28968E=29.28968\cdots になります。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

つまり,平均 2929 回の試行でコンプできるゲームに 3535 回の試行を要したのはちょっと運が悪かったと言えそうです。ちなみに確率分布は図の通り。標準偏差は 11.211.2 で,運の悪さを偏差値にすると 55.155.1 でした。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

この期待値 EE は漸化式を使って求めることもできます。nn 種類持っている状態から必要な試行回数の期待値を EnE_n とします。E10=0E_{10}=0 は明らか。求める期待値は E0E_0 です。En=1+(1n10)En+1+n10En\begin{align*}&E_n=1+\(1-\[n/10])E_{n+1}+\[n/10]E_n\end{align*}nn 種類持っている状態から必要な試行回数は,11 回の試行を費やして 1n101-\[n/10] の確率で新しいカードが出たらあと En+1E_{n+1} 回,n10\[n/10] の確率で持っているカードと被ったらあと EnE_n 回という意味です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

これを整理して E0E_0 を求めると,En=  1010n+En+1E0=  1010+109+108++101=  29.28968\begin{align*}E_n=\;&\[10/10-n]+E_{n+1}\\[1em]E_0=\;&\[10/10]+\[10/9]+\[10/8]+\cdots+\[10/1]\\=\;&29.28968\cdots\end{align*}さっきの極限値と同じ値が出ました。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

ところで,1回あたり確率 pp で成功する反復試行において,成功するまでの試行回数の期待値は 1/p1/p です。これを使うと,nn 枚持っている状態から確率 10n10\[10-n/10] で新種を出すまでの試行回数の期待値は 1010n\[10/10-n] です。漸化式 En=1010n+En+1E_n=\[10/10-n]+E_{n+1} はこれを表しています。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

しかし,コンプのためには最低でも 1010 個はペヤングを食べなければならず,運の良し悪しに関係なく僕には無理です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

高校数学で    \bar{~~~}(バー) という記号は次の5通りに使われています。

  1. 補集合
  2. 条件の否定
  3. 余事象
  4. 共役複素数
  5. 平均値
1,2,3は使われている領域が異なるだけで,構造的には同じ物です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

ただし一般の数学では,補集合は AcA^c,条件の否定は ¬p\lnot\,p で表すことが多く,統一はされていません。高校数学がバーに統一しているのは,構造的に同じであることが分かりやすいという教育上の配慮だと思います。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

1,2,3に対して,4の共役複素数は構造的に別物ですが,似ている点もあります。それは z=z\bar{\bar{z}}=z のように,2重に施すと元に戻るという性質です。これは補集合,否定,余事象のほか,対称移動,逆数,逆関数にも見られます。このような性質のことを対合といいます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

5の平均値は,1~4とはまるで違います。少しも似ている点がありません。偶然同じ記号になっただけで,ルーツが違うのではないかと思います。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

1987年の高校生クイズ選手権の予選で出された問題です。YesかNoで答えるのですが,どちらを答えるのが有利か数学的に考えてみます。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

例えば,3個の箱A,B,Cに5個の球をランダムに入れるとき,すべての箱に1個以上の球が入る確率を求めてみます。Aが空,Bが空,Cが空になる事象をそれぞれ AABBCC とすると,求める確率は,P(ABC)=  P(ABC)=  1P(ABC)=  1{P(A)+P(B)+P(C)P(AB)P(BC)P(CA)+P(ABC)}=  13(23) ⁣ ⁣5+3(13) ⁣ ⁣5=  5081=  0.617\begin{align*}&P(\bar{A}\cap\bar{B}\cap\bar{C})\\=\;&P(\bar{A\cup B\cup C})\\=\;&1-P(A\cup B\cup C)\\=\;&1-\{P(A)+P(B)+P(C)\\&\quad-P(A\cap B)-P(B\cap C)-P(C\cap A)\\&\quad+P(A\cap B\cap C)\}\\=\;&1-3\cdot\(\[2/3])^{\!\!5}+3\cdot\(\[1/3])^{\!\!5}\\=\;&\[50/81]\\=\;&0.617\cdots\end{align*}約62%です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

同様にして,4個の箱A,B,C,Dに10個の球をランダムに入れるとき,すべての箱に1個以上の球が入る確率は,P(ABCD)=  P(ABCD)=  1P(ABCD)=  1{P(A)+P(B)+P(C)+P(D)P(AB)P(AC)P(AD)P(BC)P(BD)P(CD)+P(ABC)+P(ABD)+P(ACD)+P(BCD)P(ABCD)}=  14(34) ⁣ ⁣10+6(24) ⁣ ⁣104(14) ⁣ ⁣10=  102315131072=  0.7806\begin{align*}&P(\bar{A}\cap\bar{B}\cap\bar{C}\cap\bar{D})\\=\;&P(\bar{A\cup B\cup C\cup D})\\=\;&1-P(A\cup B\cup C\cup D)\\=\;&1-\{P(A)+P(B)+P(C)+P(D)\\&\quad-P(A\cap B)-P(A\cap C)-P(A\cap D)\\&\quad-P(B\cap C)-P(B\cap D)-P(C\cap D)\\&\quad+P(A\cap B\cap C)+P(A\cap B\cap D)\\&\quad+P(A\cap C\cap D)+P(B\cap C\cap D)\\&\quad-P(A\cap B\cap C\cap D)\}\\=\;&1-4\cdot\(\[3/4])^{\!\!10}+6\cdot\(\[2/4])^{\!\!10}-4\cdot\(\[1/4])^{\!\!10}\\=\;&\[102315/131072]\\=\;&0.7806\cdots\end{align*}約78%です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

これを一般化して,nn 個の箱に rr 個の球をランダムに入れるとき,すべての箱に1個以上の球が入る確率を求めると,k=0n1(1)knCk(1kn) ⁣r\begin{align*}&\sum_{k=0}^{n-1}(-1)^k\nCr{n}{k}\(1-\[k/n])^{\!r}\end{align*}となります。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

クイズの問題は n=365n=365r=21999r=21999 の場合なので,これを代入すると,1365C1(364365) ⁣21999+365C2(363365) ⁣21999+365C364(1365) ⁣21999\begin{align*}1&-\nCr{365}1\(\[364/365])^{\!21999}\\&+\nCr{365}2\(\[363/365])^{\!21999}\\&\cdots\\&+\nCr{365}{364}\(\[1/365])^{\!21999}\end{align*}各項を概数で表すと,12.24×1024+2.13×1048\begin{align*}&1-2.24\times10^{-24}+2.13\times10^{-48}-\cdots\end{align*}これは極めて 11 に近い値です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

つまり,21999人の誕生日で356日が埋まる確率はほとんど100%であり,このクイズはYesと答える方が断然有利となります。もちろん実際の答えもYesでした。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

ちなみに,この方法で誕生日で356日が埋まる確率を求めると,2286人で約49.94%,2287人で約50.04%となります。つまり損益分岐点は2287人であり,これ以上ならばYesと答え,これ未満ならばNoと答えるのが有利です。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

方べきの定理の逆を使って4点が共円であることを証明する問題は,反転で考えると結果が当たり前に見える場合があります。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

例えば,次の図で4点O,A,E,Fは共円です。その円は,直線EFを円Oに関して反転させたものになっています。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

次の図で4点O,D,E,Fは共円です。その円は,やはり直線EFを円Oに関して反転させたものになっています。

浜田昌宏 / 浜田塾@hamadajuku

どちらの図も点Aと点Dが対応し,点Eと点Fは反転円の周上にあるのでそれぞれ不動。そして,反転は中心を通らない直線を中心を通る円に移す性質があることを考えると,直線EFが反転によって目的の円に移ることが分かります。点Oは直線EFの無限遠点に対応していると考えるといいです。

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