数学つれづれ草

束(そく)をイメージで捉える

普通に説明すると…

高校の数学IIで,2つの円の交点を通る円や直線を扱うとき,次の考え方がよく使われます。

2つの曲線 $\color{red}{f(x,y)=0}$ と $\color{blue}{g(x,y)=0}$ が交わるとき,$k$ を任意の定数として,$\color{purple}{f(x,y)+kg(x,y)=0}$ は2つの曲線の交点を通る曲線群(束)を表す。(曲線は直線も含みます)

例えば,2点で交わる2つの円C1 $\color{red}{x^2+y^2=5^2}$ と円C2 $\color{blue}{(x-3)^2+(y-6)^2=4^2}$ があり,その2つの交点を通る直線の式を求めることにします。まずは円の方程式を $\cdots=0$ の形に直しておきます。

円C1

$\color{red}{x^2+y^2-25=0}$

円C2

$\color{blue}{x^2+y^2-6x-12y+29=0}$

ここで,$k$ をパラメーターとして,次の曲線を考えます。

曲線Bk

$\color{purple}{x^2+y^2-25+k(x^2+y^2-6x-12y+29)=0}$

この曲線Bkは,$k$ の値に関わらず,常に円C1と円C2の交点を通ります。なぜなら,交点の座標はC1とC2の方程式を共に満たすため,その座標はBkの方程式に代入しても $0+k\cdot0=0$ となって常に成り立つからです。

特に $k=-1$ のときを考えると,曲線Bkの方程式は $x^2$ と $y^2$ の項が消えて,次のような1次式になります。

曲線Bk=-1

$\color{purple}{x+2y-9=0}$

これは,$x$ と $y$ の1次式なので直線を表しています。これが円C1,C2の交点を通る直線の式です。

動きをとらえる

理屈は何となく分かるが,具体的には何をやっているのかいまいちピンとこない人もいると思います。そういう人は,次のアニメーションを見てください。

赤い円がC1,青い円がC2,紫の円がBkです。$k$ に応じてBkが動いていますが,2点A,Bは常に通っています。また,$k=-1$ のときだけ一瞬直線になっていることも観察できます。

kの値の意味は?

$k=0$ のとき,紫の円は赤い円と一致しています。これはBkの式を見れば当たり前です。一方で $k$ の絶対値を大きくすると,紫の円は青い円に近付いていきます。これもBkの式から読み取れるでしょうか?

例えば,次のような2直線を考えてみます。

直線L1

$3x+2y+1=0$

曲線L2

$300x+200y+100=0$

この2直線は一致しています。3つの係数の比がどちらも $3:2:1$ だから当たり前ですね。
では次の直線はどうでしょうか。

曲線L3

$301x+200y+100=0$

今度は違う直線です。でも描いてみると,直線L1,L2とは微妙にずれているだけで,ほとんど同じ直線に見えます。3つの係数の比 $301:200:100$ が $3:2:1$ にとても近いからです。

話を戻します。$k$ の絶対値が非常に大きいとき,例えば $k=1000000$ とすると,曲線Bkの式は次のように表されます。

円Bk=1000000

$(\color{red}{x^2+y^2-25})+1000000(\color{blue}{x^2+y^2-6x-12y+29})=0$
こうすると,赤い部分の存在感はほとんどなくなり,5つの係数の比は青だけの場合に極めて近くなります。実際にこの円Bk=1000000を描いてみると,青い円C2とほぼ一致します。これが,$k$ の絶対値を大きくすると紫の円Bkが青い円C2に近付いていく理由です。$k$ が大きいと青の影響力が大きくなって,赤の存在を覆い隠してしまうわけです。つまり,$k$ の値は「赤に対する青の存在感の比率」を表していると言えるでしょう。

曲線と曲線のブレンド

2つの要素のバランスを表しているという意味では,曲線Bkのパラメーターは $k$ 1文字ではなく,次のように2文字で表した方が分かりやすいかも知れません。

$s(\color{red}{x^2+y^2-25})+t(\color{blue}{x^2+y^2-6x-12y+29})=0$

分母に $s+t$ をつけるとより雰囲気が出ます。

$\f{s(\color{red}{x^2+y^2-25})+t(\color{blue}{x^2+y^2-6x-12y+29})}{s+t}=0$

赤と青の加重平均のような式になりました。この式から分かるように,$s$ と $t$ は赤と青を混ぜ合わせるときのそれぞれの分量を表しています。できる曲線は絶対値の大きい側に偏ります。特に,$|s|:|t|=1:1$ のときは,赤と青の中間的な曲線ができます。このように2文字で考えると意味は分かりやすくなりますが,でも問題を解く時には文字は節約した方が楽なので,$s:t$ ではなく $1:k$ を使うことが多いのです。

ギャラリー

放物線と放物線を混ぜてみます。

楕円と双曲線を混ぜてみます。

離れている2つの円も混ぜてみました。

途中しばらく曲線が消えてしまう間がありますが,何が起こっているのかを知るには,3次元で考える必要があります。これは動く曲面 $z=x^2+y^2+10x+k(x^2+y^2-10x-6y+25)$ が浮き上がって,$xy$ 平面と交わらない間があるからです。

(2014/10/24)