数学つれづれ草

「すべての~」と「ある~」

最近高校1年の生徒が質問に持ってきた問題に,次のようなものがありました。

次のそれぞれのとき,区間 $I$ 上の関数 $f$, $g$ の大小関係を考えなさい。

  1. すべての $x \in I$ について,$f(x) > g(x)$ が成り立つ。
  2. ある $x \in I$ について,$f(x) > g(x)$ が成り立つ。
  3. すべての $x_1, x_2 \in I$ について,$f(x_1) > g(x_2)$ が成り立つ。
  4. ある $x_1, x_2 \in I$ について,$f(x_1) > g(x_2)$ が成り立つ。

実際の問題は,区間 $I$ は具体的に与えられていて,$f$ と $g$ も具体的な2次関数でした。$f$ は固定した2次関数,$g$ は係数にパラメータ $a$ を含んでいて動く2次関数です。そこで,(1)~(4) がそれぞれ成り立つように,パラメータ $a$ の範囲を求めるという問題です。

これは2次関数の問題として出ていましたが,テーマはむしろ論理と言えるでしょう。「すべての」と「ある」の意味を理解して $f$ と $g$ の大小関係をイメージすることは,高1の段階では2次関数を考えること以上にずっと難しいからです。

(1)~(4) は記号 $\forall$ や $\exists$ を使って表すと次のようになります。

  1. $\forall x \in I,~ f(x)>g(x)$
  2. $\exists x \in I,~ f(x)>g(x)$
  3. $\forall x_1,\forall x_2 \in I,~ f(x_1)>g(x_2)$
  4. $\exists x_1,\exists x_2 \in I,~ f(x_1)>g(x_2)$

まず,(1) の $\forall x \in I,~ f(x)>g(x)$ というのは,どの $x$ に対しても $f(x)$ が $g(x)$ より大きいということなので,グラフで言えば $y = f(x)$ のグラフが $y = g(x)$ のグラフより常に上にあればよいということになります。

次に,(2) の $\exists x \in I,~ f(x)>g(x)$ というのは,どこかに $f(x)$ が $g(x)$ より大きくなるような $x$ が存在すればよいということなので,$y = f(x)$ のグラフが $y = g(x)$ のグラフをどこかで少しでも上回っていればよいということになります。つまり (1) よりもゆるい条件になっています。

(3) の $\forall x_1,\forall x_2 \in I,~ f(x_1)>g(x_2)$ は,$f(x)$ と $g(x)$ の大小を比較するときの $x$ は同じとは限らないというのが (1) と違うところです。これは,いろいろな $x_1$ と $x_2$ に対する $f(x_1)$ の値と $g(x_2)$ の値をどのような組み合わせで比べても必ず $f(x_1)$ の方が大きいということなので,$f(x)$ の最小値が $g(x)$ の最大値よりも大きければよいということになります。これは (1) よりもさらにキツイ条件です。

(4) の $\exists x_1,\exists x_2 \in I,~ f(x_1)>g(x_2)$ は,いろいろな $x_1$ と $x_2$ に対する $f(x_1)$ の値と $g(x_2)$ の値を比べたとき,ある $x_1$ と $x_2$ の組み合わせで $f(x_1)$ が $g(x_2)$ より大きくなっている,そういう $x_1$ と $x_2$ が存在すればよいということなので,$f(x_1)$ の最大値が $g(x_2)$ の最小値よりも大きければよいということになります。これだとすべての $x$ について $f(x)$ が $g(x)$ を下回っていても条件を満たし得るので,(2) よりもさらに条件はゆるく,(1)~(4) の中で最もゆるい条件になります。

最初は (1)~(4) のどれも $f(x)$ が $g(x)$ より大きいということを言っているだけで何が違うんだ? と思ったかもしれませんが,このように見てみると意味はかなり違うということが分かったでしょう。

(2003/10/01)